2013年2月17日に図書館ボランテイア「小荷駄のみどりから・・・」と市立図書館が共催した市民講座の報告です。
今回は、西川町立大井沢自然博物館学芸員の武浪秀子氏に、「森の食は幸せいっぱい!~食から学ぶ山形の自然~」と題して講演していただきました。聴講者は、スタッフを含めて約40名でした。
武浪さんは鎌倉生まれの横浜育ち。森林と自然に関わる仕事に就きたいと、学生時代に研修で訪れた西川町の職場に就職されました。その後、ご両親も大井沢に定住され、ご両親は同地で「ミストガーデン」という西洋風の庭園を開設し一般公開しています。(開園は5月とのこと。)
今回の講演では、山形の森の豊かな恵みである自然の食材について、パワーポイントで画像や資料を紹介しながら、実践的(!)なお話をしていただきました。
まずは山菜のお話・・・“山のアスパラ”と言われるのは山菜の「シオデ」ですが、自生のアスパラは「キジカクシ」というそうです。
山菜のうちでもっともポピュラーなのは「ワラビ」ですが、山形には「ワラビ文化」といえるほどの食文化があると述べられました。自然のワラビの出荷量のナンバーワンは秋田県ですが、栽培ワラビの出荷量日本一は山形県で、国内産の7割を占めているそうです。ワラビには発がん性があるため、灰汁抜きが肝心。灰汁抜きで発がん性や中毒性のあるプラキロシドという物質を、分解し易いジエノンという物質に変えることにより、発がん性を抑えているということです。
また、「ゼンマイ」は“山のダイヤモンド”と言われてきました。高額で売れるため、山で糧を得る人々にとっては、重要な現金収入源だったことによるそうです。
さらに、山形では食用として重宝される「カタクリ」ですが、全国的には絶滅危惧種に指定されています。とくに関西では絶滅の恐れがあり、関西の方が山形でカタクリを採って食べていると聞くと、「なんであんなに可愛らしいものを食べちゃうの!?」と顰蹙を買う恐れがあるそうです。
カタクリは干して保存食にされてきましたが、食べすぎは禁物。花が咲くまで8年かかり、寿命は20年です。
また、よく聞くのは「アケビ」の食べ方について他県の方から驚かれるという話。山形では中身を取り除いて皮を食べますが、全国的には皮は食べず、中身(つまり種の部分)を食べます。これも国内生産量の9割は山形県産だそうです。また、山形県が生産量日本一の山菜といえば、なんと言っても「タラノメ」です。
胃腸の調子が悪いときに服用すると効果テキメンの「キハダ」ですが、これは山形県に生息している唯一のミカン科の植物だそうです。筆者も、昔、喫煙していたころは風邪をひくたびに胃の具合を悪くして、義母が作ってくれるキハダの溶液を飲んで何度も救われたものです。
自然の恵みで、県内で絶滅に瀕しているのが「シドミ(クサボケ)」。この植物は、現在は山形空港の滑走路周辺の緑地で、フェンスに守られて細々と生きているそうです。
このほか、武浪さんは、木の実を入れた手作りクッキーや大井沢に伝わるお菓子「シロモチ」の実物を持参してくださり、参加者皆で試食しました。シロモチについては、地元の方が「この味がうまいと思って食べられるようになったら大井沢人」とおっしゃっていたそうです。
ほかに、ササ巻き(大井沢風)のレシピも配布・解説していただきました。
また、食の話と併せて、マツ枯れ、ナラ枯れ、ブナの葉枯れなど、山の環境の変化が激しくなっていることや、武浪さん自身が中心になって活動している環境保護活動についてもお話されました。
2012年の秋はブナの実が大凶作でほとんど実が成らなかったことから、クマの出没も増え、捕獲頭数も増加しました。講演後の質疑の時間には、参加者からはクマやイノシシやシカが増えて、自然のバランスが崩れてきたのではないかという質問が出され、山形県における野生鳥獣への対応についても話題となりました。
さて、次回は3月16日(土)13時30分から、山形大学農学部准教授の江頭宏昌さんの講演「在来作物の魅力」です。どうぞご期待ください。 (文責・企画広報班 高橋)