2017年12月11日
薮内正幸原画展・藪内竜太氏講演会レポート
12月9日に始まった薮内正幸原画展。
オープニングに際して薮内正幸美術館館長の藪内竜太さんによる「好きこそものの上手なれ~動物画家薮内正幸」と題した講演会が開催されました。
お父さんである薮内正幸さんの子供時代から紐解き、どのように動物に魅せられ、またどのようにあのような細密で正確な動物の絵を描く力を独学で体得されたのかを、ユーモアを交えながらお話いただきました。
戦中に大阪で生まれ、モノの乏しい時代に育った薮内少年。
小さい頃から生き物が大好きで、大阪の天王寺動物園に毎日通って、日がな一日動物を観察していたそうです。そうして家に戻ると、動物たちを思い出し、それを紙に描き起こしていたようです。その場で写生するのではなく、感動とともに自分の頭の中に記憶された動物の姿を思い起こして、家でスケッチしたというわけです。ライオンを観た日は、家でライオンのように四つ足で歩いていたとか。動物に自分がなりきるほど観ることで、その動物を知ろうとしたその集中力のすごさに、まず驚かされました。
お話の中で、特に印象的だったのが、子供の頃一番はじめに買ってもらった本にまつわるエピソード。
『動物と私たち』という生き物に関する本で、小学3年生で買ってもらい、生涯の愛読書となったそうです。カラーの口絵がついた、当時としては本当に宝物のような本だったそうです。
薮内少年はこの本の著者である動物学者高島春雄先生に、動物についての疑問を手紙でいろいろと質問していたそうです。まじめな高島先生との文通を通して、ますます動物についてのめり込んでいきます。その事が、さらに哺乳類専門家である今泉吉典先生との出会いにつながり、それが高校卒業の頃には、のちの職場となる福音館編集部松居直さんとの出会いにもつながっていくのです。話を伺っていて、これほど本が人の人生に影響を与える事は滅多にないのではと思われました。
就職してからは、「動物の骨格標本を1万~2万枚描きなさい」と言われ、起きている時間のすべてを描くことに捧げた時期もあったそうです。さぞかし大変だったのではと思うところですが、後に息子である竜太さんにその頃の事を「あの頃は楽しかった」と語ったそうです。本当に打ち込んでおられたのだという事が伝わってきました。
あっという間の1時間半で、お話を聞いてすっかり薮内少年のファンになってしまいました。
講演会を聞いた事で、新たな視点で原画や絵本に向かえる気がしました。
原画展会場には小学時代や高校時代のスケッチも展示されています。「好きこそものの上手なれ」とはよく聞く言葉ではありますが、本当にその言葉にふさわしい人生を歩まれた方だったのだと思いました。
原画展は12/17までです。ぜひご覧ください。
Posted by 図書館ボランティア「小荷駄のみどりから…」 at 14:54│Comments(0)
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